子供が面白いものを見せてあげるよ、と言うので出掛けました。
場所は都内の某公園です。

「何があるんだよ、こんな所まで連れて来て」
「まあまあ、見てのお楽しみだから」
まだ早いというので、家族4人で最寄り駅の駅前の居酒屋に入ります。
生ビールと枝豆でいい気持ちになった頃、
「そろそろいかなきゃ」
と言うので、店を出ます。
8時を過ぎていました。

ほんの少し歩いた所に公園がありました。
照明もあまりなく小さな公園です。
「注意して歩いてね」
と言うので、下を見ながら気をつけて歩きます。
すると、そこらじゅうに小さな穴が。

「何、これ?」
「蝉だよ。毎晩、沢山の蝉が這い出して来るのさ」
「へえ、それにしても凄い数だね」
「俺もこんな凄い所は初めてだよ」
「よく見つけたね」
「うん、たまたまだけどね」

そう言えば、この子は小さい頃からよく蝉の抜け殻を拾って来ました。
今でも家の中に沢山残っています。

「あ、いたいた」
見ると、蝉の幼虫が穴から這い出して来るところでした。
周りを見るとあちらにもこちらにも。
ケヤキの木を見ると沢山の幼虫が這い登っています。
「凄いなあ。何十匹いるか分からんね」
ビデオカメラを持っていなかったので、スマホを取り出します。

「アブラゼミだよ。だから6年というところかな」
6年間も脱皮を繰り返しながら地中で過ごしたのです。
そう思えば仲々感動的な瞬間に立ち会っている気がします。
「羽化にはどの位かかるの?」
「2時間というところかな」
子供の説明を聞きながら、観察・撮影を繰り返します。
虫好きの奥さんも感動しているようです。

羽化は蝉にとって大変困難な事業です。
全く無防備なので天敵に襲われたり、体力が尽きて羽化できないこともあります。
無事に羽化できた者だけが短い生を謳歌します。
よく、蝉は7日しか生きられないといいますが実際は数週間生きるようです。
それでも短い生には違いありません。
楽しい生を謳歌して欲しいと心から願いたくなります。

画質が少し劣りますが、早速動画にまとめました。
敬虔な雰囲気をお楽しみください。



空蝉の頃